この前のイベントに見えたお客さんで、「スパイス難民なんです！」と言われた方がおられました。
実はこの言葉に近い事を、別の場所でも言われた事があります。
「名古屋って、他の地域から比べるとカレー屋さん少ないですよね？」ともよく言われます。僕も全く同意見です。
「えっ？？カレー屋さん沢山あるじゃん！インドカレーもココイチもどこ行ってもあるし。。」
と、思われる方も多いと思うけど、そうじゃないです。僕を含めたカレー好きが求めているのはカレー屋さんの数もそうなんだけど、ジャンル、種類の事なんです。
実際名古屋はカレー屋さんが少ないです。東京、大阪は何年も前から、南インド料理やスリランカ料理が流行っているし、ネパール料理店もどんどん増えています。
いわゆるナーンとバターチキンカレーのようなメニュー構成のお店ではないものが、ジャンルとして受け入れられ沢山の人気店が乱立し、しのぎを削っています。更に大阪を中心に爆発的に流行している『スパイスカレー』という新ジャンル。
華やかに１プレートに盛り付けられ、ご飯でいただくのが特徴で、ランカ系ベースだったり、ネパリ系ベースだったりと種類はさまざまですが、それぞれのお店がオリジナルのメニューを提供しています。
数年前、大阪の超人気スパイスカレー店に行った時に衝撃を受けました。味はさる事ながら、食べる前からワクワクしてしまう圧倒的な見た目の華やかさ。
自分が作れるもので、このスタイルでやってみたい！と思い、イベントでの提供スタイルを変える事にしました。
このスタイルでさせていただくようになってからのお客さんの反応は様々で、どうやって食べて良いのか分らないとか、全部混ざっちゃうのはちょっと。。と言われる事もありますが、概ね好評で、狙っていたとおり見た目で喜んでもらえる人が多く、名古屋でやっても受けるという確信を得ました。
肝心のカレーに関しては、ジャンルにこだわらない事を大事にしようと思っています。
逆に言うと、スパイス文化圏の料理をしっかり修行した事がないので、本格的なインド料理とか、ネパール料理やスリランカ料理は作れませんし、作りたいとも思っていません。
それより日本で生まれ育った自分が、今まで作ってきた料理の知識を活かして、日本人だから作れるスパイス料理をテーマにして創作していった方が美味しいものが作れると思っています。
例えばうちの定番メニューになっている大根と鯖のカレーは和風のお出汁を取り、大根を煮込んでしっかり味を染み込ませてから、インドカレーのベースのペーストと合わせています。他にはないオリジナルの味が出せていると思っていますが、きっかけは作りすぎた大根の煮物をどうしたら、美味しく食べれるか？から始まっています。
日本独自の発酵調味料や食品もフル活用していくつもりです。改めて日本の食文化はすごいです。出汁、調味料使わない手はありません。
偉そうな事を書いてしましましたが、日本の定番のカレーライスも、インド料理を元にイギリスで生まれ、それが日本に入って独自に変化したものです。
玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、肉という具の構成は、煮物の発想そのままですよね。
違う文化のものを融合し独自の進化をさせて、新しいものを作る。昔から行われている事で、僕のしようとしている事は特に目新しい訳ではありません。
なので正解なんてないし、ケミカルなものを入れず美味しければ何をしてOKと思っています。カテゴリーに囚われないで自由に創作した方が自分には合っているとも思っています。
後は良いトコ取り！笑。例えば、今あかつ亭のプレートの付け合わせには、ムラコアチャールというネパール式の大根の漬物が乗っていたり、ココナッツサンボルというスリランカのふりかけのようなものが一緒に乗っています。ひょっとしたら、スパイスマニアさんからは、ありえない！とか思われかも知れないけど、合うんですよね。＊個人の感覚です笑
現地のアチャールなりサンボルが乗ったら合わないかも知れませんが、好みの味付けでカレーも付け合わせを作り同じプレートに乗せる。
エゴかも知れないけど、自分の作ったものだから合うのは当たり前かも。
話しが少し矛盾するかも知れませんが、お店の場所次第ではダルバート（ネパールの１プレートカレー定食）も提供したいと考えています。
但し、これも現地の味を再現するのではなくて、自分だから、日本人だから作れるものにこだわります。
ネパールでも民族ごとにダルバートの味は違いがあり、特定の地域でしか使わない食材やスパイスがあったりで、どれが正解とも言えないからです。
だから、ダル（豆のスープ）とバート（ご飯）があれば、自由な発想でして良いと思っています。日本の名古屋人が作るダルバートです。かと言って、赤味噌味になったりしませんが笑。
この地方にもジャンルにこだわり本物を追求した美味しいカレー屋は何軒もあります。
チェーン店のココイチも、同じ味を保ち続けて、がっつりお客さんの心を掴んでいるのだから凄い事だと思います。
どれも否定はしませんし、むしろ尊敬しています。
カレーを食べる選択肢として、名古屋でもスパイスカレーというジャンルが定着したらいいのになぁと思っています。
そんなカレーを出すお店にしたいです。